微分音のグリモワール
The Microtonal Grimoire
直感と精密の二層で読む、微分音の総合リファレンス
ピアノの白鍵と黒鍵のあいだには、聴いたことのない音が眠っています。ドとド♯のあいだ、その狭い隙間にさえ、澄んだ和音や、名前のない旋律が息をひそめている。
12平均律という私たちの音楽の「常識」は、鳴らしうる響きのごく一部を選び取った、ひとつの約束事にすぎません。
この書物は、その約束の外側へ出るための魔導書です。オクターブを31に分かつと、ルネサンスの音楽家が夢見た純正な3度が甦り、新たなる協和音が生まれ、中東の旋法や、まだ誰も名づけていない音階が地図の上に現れます。
数式は呪文、音律は召喚陣、そして鳴らすたびに耳が作り替えられていく。
理論と実践のどちらからでも、あなたはこの世界に入れます。
中心に据えるのは31平均律。
オクターブを31等分するこの音律は、ルネサンスの純正な長3度への憧れ、Huygens の数理、Fokker のオルガンを経て現代に届いた、微分音の交差点です。本書のすべての部が、どこかで31に合流するように設計されています。
読者として、二種類の頭を同時に想定しています。
① ひとつは「まず鳴らして、耳で納得したい」音楽家の頭。
② もうひとつは「定義と計算で足場を固めたい」理論家の頭。
そのため各節は直感レイヤー(琥珀色の枠)と精密レイヤー(藍色の枠・開閉可能)の二層で書かれています。詳しくは序章へ。
読書経路
順に読む必要はありません。目的に応じて、次の三つの入口を用意しています。
まず音を鳴らし、耳から入る。理論は必要なぶんだけ。31平均律の響きと実践へ最短で。
Ⅰ → Ⅳ → Ⅶ → Ⅴ 理論家として定義から積み上げる。格子・コンマ・RTT・MOS を経て、音律アトラスと響きの科学の深部へ。
Ⅰ → Ⅱ → Ⅲ → Ⅴ → Ⅵ 実装者としてDAW・MIDI・楽器で微分音を鳴らすことが目的。理論は運用に必要な範囲を拾い読み。
Ⅰ → Ⅳ → Ⅶ → Ⅲ♪ の付いた枠は音が鳴ります。最初のクリックで音声が有効になります。
(音量にご注意ください)